18市町村 消防団員インタビュー
(2024年8月取材時点)
日田市消防団
天瀬方面団本部 副団長
田代 信二さん
会社員
1985年5月入団(団員歴39年)
後悔は残るが救えた命もあった
なんとも言えん気持ちだった。
2020年7月豪雨災害の時には玖珠川が氾濫し、私の店も浸水するなど被害を受けました。方面団長なので団員の指揮をとるために、豪雨の中、線路を歩いて災害対策本部へと向かいました。団員と共に住民の避難誘導に当たりましたが、犠牲者を出してしまいました。力ずくでも無理やり避難所に誘導できていればという団員の言葉を聞くと、後悔が残ります。一方で、取り残された住民を救出するなど、救えた命もあります。
現場では団員が熱くなってしまうこともあるので、無理をさせないように冷静な判断を心がけました。
まずは自身の命が大事。被災した後も違う地域の分団員と一緒に被災した家の片付けをしたり、不明者の捜索に当たったりしました。片付けは本当に大変でした。ボランティアの方にも感謝しています。
災害を機に変わった意識と
消防団にできること
私を含め、住民もこのくらいの雨だったら大丈夫だろうという気持ちがあったんだと思います。
あの豪雨災害を機に、住民の意識は確実に変わったと思います。
「災害から命を守る約束事」という緊急連絡先や避難場所などが記入されたステッカーを自宅に貼り、今まで以上に避難訓練に力を入れる。
ただ、私たち消防団にできることって地道に呼びかけることしかできないんです。
風化させず次世代に引き続くために
風化させてはいけないんです。被災した話を県内各地の消防団と共有し、教訓にしていきます。
また、若い世代が、起きた出来事をまとめて展示をしたり、率先して動いてくれています。
災害で店の大部分が浸水したあの日、店を畳むことも考えました。でも、息子が地元に帰ってきてくれましたから。
あきらめず、再びこの地でスタートをきることにしました。
この川と一緒に育ってきました。自然と共存し、次世代に引き継ぐために、災害に強い消防団を目指していきます。
竹田市消防団
直入方面隊第1分団第2部 所属
峯野 高翔さん
公務員
2023年4月入団(団員歴2年)
色々な世代の方と話し、
地域のことを知る
消防団員の父と地域の方の勧めで入団しました。
年末夜警に参加している父の姿は見たことがあるんですけど、具体的にどんな活動をしているかは知らなかったんです。
消防団には知り合いもいて、同年代の人も入団したので入ることに抵抗はありませんでした。年配の方が多いので「おじいちゃんと話してもつまらんやろ」と気を遣っていただくことがありますが、全然そんなことないです。
色々な世代の方と話すきっかけにもなるし、なにより地域のことに詳しくなれるので楽しく活動してますね。
自分のできることを増やして
自信に変えていく
消防団に入っている職場の先輩も多いので、出動要請があった時には「早く行ってきな」と言ってくれたり、出動している間の仕事をフォローしてくれたりして、活動には非常に協力的です。
でも正直、いざ出動ってなると不安になるんです。
現場に行って手伝えることがあるのか、住民の方は無事なのか。この不安を取り除くためにも、少しずつ自分のできることを増やしていって、先輩たちの姿に近づけるよう訓練をして自信をつけていきたいと思います。
とにかく地域の役に立ちたいんです。
若い世代を巻き込んで地域を盛り上げたい
若い団員が少ないんですよね。私もそうだったんですけど、同年代は消防団の存在は知っているけど、具体的にどんな活動をしているかは知られていないんです。訓練がきつそうとか、飲み会などの付き合い多いんじゃないかといったイメージがあると思いますが、実際はそんなに負担はなかったです。
消防団の活動は強制参加ではないですし、思っているほど活動自体も多くなかったです。
これから私たちがすべきなのは、消防団のリアルな部分を普段の会話の中に盛り込んで同世代に伝えることだと思います。
上の世代の方からよりも同世代の私たちから伝えたほうが、うまく消防団の重要性や魅力が伝わるんじゃないかと思うんです。
楽なことばかりではないけれど、気軽に地域貢献ができることを伝えて、若い世代を巻き込んで地域を盛り上げていきたいです。
九重町消防団
第4分団8部 所属
日野 雄太さん
公務員
2023年4月入団(団員歴2年)
誰かの役に立てる仕事をしたい
就職先を考えていた時、実は消防士になることも考えていたんです。2020年7月豪雨で近くの川が氾濫して、自宅が被害に遭った時に消防士や消防団員が駆けつけてくれて、片付けや夜廻などをしてくれたおかげで普段の生活を取り戻すことができました。
その姿がかっこよくて、人を助けるなど役に立てる仕事をしたいと思いました。
町全体のことで貢献したいと考え今の仕事を選びましたが、消防団は消防士のような活動をすることによって地域の力になれると思い、父親から誘われた時は断る理由がありませんでした。
有事と日常を切り替えられる、
部活動みたいな
火災現場でちゃんと動けるのかという不安はありましたが、道具の使い方などの基礎は訓練で教えてもらえるので少しずつ不安は解消しています。月1回の定例会では防災倉庫の点検や情報共有をしています。
定例会終了後には、先輩たちと仕事や趣味の話などプライベートな話もしますね。年配の方は若手に気を遣って飲み会を減らそうとしてくれていますが、私はお酒が好きなので、気にせずぜひ飲み会に誘ってくださいって言ってます(笑)。
高校時代は野球で汗を流していましたが、その時の感覚みたいな。多少の上下関係はありますが、練習の時と日常の切り替えがはっきりしていて、休みの日には一緒にゴルフへ誘われたりと、団員とはいい関係性を築けています
自分を助けてくれた姿を目指して
地元の同世代はほとんど消防団に入団していて、情報を共有しています。
普段の会話でも雨が降った時に川の水位を確認したり、山崩れなどの危険箇所を意識するようになり、防災意識が高くなりました。
また、活動を通して地域住民の顔が分かるようになったことで、仕事がしやすくなりました。
被災した時はまだ学生で自分の身の回りの事しかできませんでしたが、
あの時助けてくれた消防団員のかっこいい姿に少しでも近づくために、地域を守っていけたらと思っています。
玖珠町消防団
東部方面隊 所属
小野 敏彦さん
会社員
1995年7月入団(団員歴29年)
山火事も多く200回以上の出動経験
玖珠町消防団では20年くらい前にタンク車が導入されてから、200回以上は出動しているんです。
山火事が多く、隣町と火事が重なることがあるので、初期消火だけでなく実際に鎮火まで行うこともあります。そういった理由で1500Lの水が貯水されたタンク車を配備してもらい、地域の火消しを担っています。
タンク車はうちの分団にしかないので、玖珠町で起きた火災の際には必ず出動することになります。玖珠町では一番出動の多い分団じゃないかと思いますね。団員はそれぞれ仕事を持っていますが、地域を守るため責任感を持って活動をしています。
おじさんより子どもたちの声のほうが
効きますね(笑)
子どもの時から防災について知ることって大事だと思うんです。
自分のことを守れるようになるし、親の意識も高まる。他県でのことですが、高校生がAEDを使用して人命救助をした話などを聞き、防災教育の重要性を再認識しましたね。そこで自分たちでも子どもたちに何か伝えることができないかと考え、県が毎年行っている地域消防アドバイザーの研修に参加し、資格を取得しました。コロナ禍だったこともあり、思うような活動はできませんでしたが、協力していただいた幼稚園では、実際に消防車に乗ってマイクを使った広報活動をしてもらったり、防火服を着て写真撮影などを体験してもらいました。親御さんや子どもたちはもちろん喜んでくれましたし、消防車のスピーカーから聞こえてくるかわいらしい子どもたちの声に、地域の人たちの反応もよく、いつもより耳を傾けてくれていました。やっぱりおじさんの声より効果があるんですね(笑)。後日、子どもたちが書いた感謝の手紙をもらった時はとてもうれしくて、宝物のように大事に取っています。やるからには町全体の園児や小中高生に向けて防災教育をしていきたいです。
新しい考えや発想で地域を守っていければ
まだ消防団について古い考えの方が多いんです。
でも今は私の分団では飲み会も減っているし、基礎の動き方さえ分かれば、そこまで訓練をする必要もないと思っています。
出動回数が多いこともあり、実際の動きは現場で習得していきますし、これからはもっと新しい考えで地域を守っていってくれればいいんです。
若い人の発想で、ドローン隊やバイク隊を新設するなど自分の興味のあることや得意な分野で力を生かしてほしいですね。